動かない水の群れに似て
澱んだままの僕の胸
この夏遊んだボートのそばに
なすこともなく立ちつくす
あのころはよかったと
使い古された言葉をつぶやき
古くもない過去をふりかえる
手を伸ばせば届くような
夏の陽ざしを
呼びもどすことはできない
僕が年を経るごとに
季節は色彩を変えてゆく
光の量が減少する
らいねんの夏でさえ
あの眩しさの保証はない
僕は真底 思い出す
季節に浸って過ごせた日々の
こころの深さと輝きを
かげりはじめた季節への感度
僕はとたんに怯えただろう
あてもなく自分を探り
さまよい歩いたその果てに
たどりついた 時の湖
水は動くだろうか
氷は溶けるだろうか
輝かなくてもいい
たしかな季節に触りたい