アメ

たとえば あの時
幼いあなたにアメを一個
与えてはいけなかったろうか
躾だからといって また
歯のためだからといって
与えなかったアメがいくつもある

わたしは生来のけちんぼう
愛情も物も出し渋る
抱えこんで
誰のために使うわけでもなく

そんなふうに
自分を苛んでみたところで
償いにはならない
あなたたちの満たされなかった
あどけない欲望は
いつまでも翳りとなって
その生に残るのだろう

いくら手繰り寄せても
あなたたちとわたしとの
頬ずりしたくなる あの
みずみずしい日々は
還らない

いまになって
いっぱいに抱えている
アメは異様に甘すぎて
わたしは消化できないでいる




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