いのち

ハムスターが死んだ
体長6センチほどの
機敏な子だった
大きすぎるケージの隅っこに
灰色の布の切れ端のような身体が
ぽしゃりと転がっている

きのうまでの明るかったケージは
薄暗くだだっ広いだけの箱となり
どこまでも続く砂漠のなか
誰もが見過ごす灰色の塵
そんなふうに
ケージの床に敷きつめた
おが屑の隅の隅
しょぼくれて何も言わない
小さなむくろが転がっている

餌にしていたヒマワリの種
その生々しい殻が
おが屑の上に散らかっている
きのうまで
躍動していたいのちの
走ったかたちに散らかっている




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