さくら幻景

早朝の友の訃報に立ちつくす。はげしく桜花散りしく庭の辺

まだ蒼い日々おたがいを赦しあい秘密を分かちしことのありしも

潔く生き居し友は死を見据え明るき文にてわたしを励ます

石段を下りれば校庭、桜しべ降る思春期のこころ愛(かな)しも

石段に散る花びらの思い出に積もる高等学校の同窓なる友

川の辺にうす雲いくつも架かりけり儚き花弁の創る幻景

山道を行けば突風にさくら舞う内なる狂気呼びさますごと

わたくしにうすべに色の雨が降る。狂うことへの危険なあこがれ

まだ無垢なたましいあるなら狂気という真白な衣装が似合うだろう

ともだちへの悔恨、自分を赦さないまましばらくを生きていかねば

めぐり来る春また桜の花の咲く変わらぬものと変わりゆくもの




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